ソーシャルムーブメント(社会転換・変革)はどのように起こるのか?

”社会変革” ”イノベーション!” ”社会を変えよう!”

これらの文字をまじまじと見つめ直し、改めて定義してほしいと言われると...言葉に詰まる人もいるのでは?

 

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そもそも”変革” ”転換” とは何なのだろうか。

どうやって生まれ、私達の日常生活の中で認知されていくようになり、一つの社会的ムーブメントとして社会構造を変えていくのか。

今回は、そんな疑問に答えるFrank Geelsが提唱した「社会の構造的転換(Socio-Technical Transition)」という社会の構造を複数階層に分けて考えるMLP(Multi level perspective)の概念を紹介します。

 

 

まず、社会の構造的転換(Socio-Technical Transition)という名前は少し堅苦しく、どのようなものが社会の構造的転換(社会変革)に当たるのか、イメージしずらいかもしれません。

 

例えば、「再生可能エネルギーへの転換」

再生可能エネルギーとは、太陽光発電風力発電など自然界に常に存在するエネルギーのことで、①「枯渇しない」②「どこにでも存在する」③「CO2を排出しない(増加させない)」という特徴があります。(関西電力より)

最近では、国単位でデンマークアイスランド・ノルウェーなどの北欧諸国が再生可能エネルギー100%の転換を目指して活動しており、企業単位でもGoogleが100%の転換を達成したと発表するなど、再生可能エネルギーは社会の大きなムーブメントの一つであると言えます。

 

再生可能エネルギーへの社会転換の始まりは1970年代と言われています。

日本では、1970年代の二度のオイルショックが与えた経済影響より、石油代替エネルギーとしての再生可能エネルギーの重要性が認識されることとなったそう。(出典:経済産業省

 

 OECDのデータによれば、1970年代を始まりとしてデンマークが飛躍的な転換を見せています。(赤:デンマーク、紫:OECD 、青:日本)

図:一次エネルギー供給に対する再生可能エネルギーの割合(%) 1970- 2016 (OECD)

 

このような社会的ムーブメントの構造を説明しているのがイギリス マンチェスター大学の教授 Frank Geelsが提唱した「マルチレベル視点理論」(Multi level perspective model (MLP model) という概念です。

 

彼が主張するMLP理論とは、社会変革は主に3つの視点(レイヤー・階層)が相互に刺激し合うことで発生するというもの。

※()内に再生可能エネルギーの例をとって事例をいくつか載せています。

 

1. 大きな視点による目標・ゴール【社会技術ランドスケープ:Social Landscape】

国際レベルでの目標や国際会議の取り決め、長期戦略・行動規範となるような大きな指針 (e.g. 国連が定めるSustainable Development Goals (SDGs)、各国の環境改善に向けた協定COP21京都議定書政府のCO2削減目標など)

 

2.社会のいくつかのトレンド・体制【社会技術規範:Socio-cultural Regime】

市場のトレンド、業界の動き、科学技術の進化、規制や行政の政策、慣習文化の変化

(サステイナビリティ消費に対する消費者意識の向上、ESG投資のトレンドソーラーパネルの発達や電気自動車・蓄電池の技術発展、FiT制度など政府の取り組みなど)

 

3.革新的な発見・発明【ニッチイノベーション:Niche Innovation】
新たな技術(電気自動車)、新しい概念(シェアリングエコノミー)

 

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LCS-RNet の論文より引用:電力部門のエネルギー転換(p.7)

 

 

個別の事例を見ていけば、細かい違いはあるものの、

SDGsやCOP21などという世界的な取り組み(社会技術ランドスケープ

にインスピレーションを得て、小さな発明や発見・一つのアイディア(ニッチイノベーション)が生まれ、あらゆるセクターのトレンドに後押しされながら(社会技術規範)、大きな社会的ムーブメントに成長していく(社会の構造的転換)。

という彼の提唱する社会変革に対する構造的概念は、大きな視点で物事の流れを理解する時に役立つのではないでしょうか。

 

「言われてみればそれはそうだ!」という感じもあるかと思うのですが。

改めてMLPモデル構造を理解すると、これまで感覚的に捉えていた社会の様々なムーブメントや転換について、納得感が得られるのではないかと思います。

 

 

(以下参考)

再生可能エネルギーの例で言えば、こちらのLCS-RNetの文献で英国やドイツの事例を元に分析されています。(P.6あたりになります。)

https://lcs-rnet.org/wp-content/uploads/2017/04/%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E9%83%A8%E9%96%80%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E8%BB%A2%E6%8F%9B.pdf

 

他にも、「Co-­creating Sustainable Urban Futures」という本の中の第二章「サステナビリティトランジションの考え方の導入」で紹介されているようです。

http://mmatsuura.com/research/transition/Chapter_2-JPN-20150319.pdf

 

また、以下のサイトではUberAirbnbなどの昨今のシェアリングエコノミーによる社会転換についてMLP理論を応用し説明されています。

www.slideshare.net

 

元のGeels教授の文献が気になる方はこちらからどうぞ。

www.sciencedirect.com

 

www.sciencedirect.com

 

www.sciencedirect.com